コラム

hummingbird No.21 スタンダードについて考えてみる

春一番の知らせと共に、花粉症の家族を見ているだけで気の毒なシーズン到来です。
2月中旬に群馬県では25℃以上の夏日。思わず上着も羽織らず自転車に乗り、ウキウキ爽やかな風を切ってみましたが、やはり2月らしい冷たい空気に戻ると、あたたかな春が恋しい気持ちの裏でどこか安心します。

このところ、雨や強風が続いていてゴミ拾いに出ていませんが、ついつい歩いているとゴミに目がいきます。ティッシュやお菓子などの空袋が風に舞って飛んでいくのを見ると思わず追いかけたくなってしまいます。先日は、道路の排水溝のグレーチングに挟まっている煙草の吸殻を拾うのに、トングで挟み損ねて下水に落としてしまい撃沈しました。よく挟まっているのです。当たり前のようにあの形ですけれど、あの形はゴミ以外にもいろいろ挟まって危険なんですよね。ヒールが挟まって靴が脱げてしまっている人を見かけたこともあります。
当たり前すぎて疑問にも思わないけれど、それが最適なのか?ということって実はいろいろありませんか?

今日は一冊の本をご紹介します。
『シン・スタンダード』 谷口たかひさ著(2024年2月初版発行)
谷口氏は約80か国を旅され、社会の課題解決を志しドイツへ移住し起業。2019年ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにしてから、気候危機の発信や日本では報道されない世界情勢にまつわる講演で全国を回られています。
私も家族で講演を聞きに行きました。小学生の子供にもわかりやすいお話をしてくださって、全国の小学校や親子参加のイベントなどからも講演依頼が殺到して、多いときには1年で515回(日本で)の講演をされたそうです。2021年には国連総会の司会・スピーチもされました。

先ほど書いた「当たり前すぎて疑問にも思わないけれど・・・」につながりますが、こちらの本では世界中を旅された谷口さんだからこその『生き方の選択肢が増える、48の最新世界常識』ということで「世界の常識」と「日本の常識」が比較されています。

内容は
◉幸福度世界上位のデンマークでは通知表禁止!
◉世界初!フランスが売れ残った衣類の廃棄を法律で禁止!
◉世界報道自由度ランキング 日本はG7最低の「68位」
◉インドでは、ひとにめいわくをかけてもいい
◉日本のお母さんは家事をやり過ぎ
などなど。この言葉だけでは誤解を招いてしまうものもありそうですが、例えば一番最後の「家事をやり過ぎ」というところ。ドイツでは料理に火を使うのは晩御飯の時だけ、朝ご飯はフルーツやシリアルなど。ほんの一例ですがそんなことをはじめ、家事が減ることはガスや電気を使う時間も減る、それは人にも地球にも優しい、ということにつながっている、と。

谷口氏はこの本をきっかけに次の2つの感覚を手にしてもらいたい、と書いています。
ひとつは、心がゆるまる感覚。外の世界を知ることで、先入観という思い込みの器の中で勝手に窮屈さを感じていたことに気づけるはず。
そしてもうひとつは感謝してもしきれない感覚。外の世界を知ったからこそ、日本の当たり前がいかに当たり前ではなく、ありがたいものだったのかに気づけるはず。
私はまさにそんな感覚の中にいます。「あ、そのやり方すごくいいな」という想いばかりでなく、例えば先ほどの「家事」について言えば、確かに火や水などエネルギーの使用量に心を配ることは優しい選択だと思いますが、心のこもった煮物を思う時、手間ひまかけて作られたものに癒される時に感じるありがたさは、じんわり心を豊かにしてくれます。
時には「いつもの安心」を抜け出てみることで、新しい自分の感覚に出会うのも悪くありませんね。最後に、アウトロダクションより。『多くの人が、この本をきっかけに凝り固まった価値観の檻から出られることを願っている。そして、「心の選択肢」が増えることを願っている。その上で、自分に合うものを、自分で「選択」して欲しいとも。』