コラム

hummingbird No.35 本当に必要な分

風薫る、緑が眩しく瑞々しいとき。雨上がりのまだ皆が寝静まる静かな時間に、そっと窓を開けて感じる清らかな空気と鳥たちの声は特別なプレゼントをいただくようです。大阪・関西万博が開幕しました。この万博がめざすものの一つに”持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献”とあります。SDGs達成の目標年2030年まであと5年!
私の周りでは既に行った人、GWに行く人、海外パビリオンの一つの設計に携わったという人など割とHOTではありますが、皆さんはいかがですか?自分自身は画面越しで十分だと思っていたのですが、未来を生きるこどもにはその目で肌で感じる機会を作ってあげたいという気持ちが沸いています。

さて、突然ですがファスティングをご存知ですか?いわゆる『断食』のことです。
”一定期間食事を断つ”という意味では断食なのですが、ファスティングというと一般的に健康やダイエットを目的としています。
私が初めて知ったのは10年ほど前、断食道場といって、プロの指導の下で安全に断食に取り組む宿泊型の施設について目にしました。
当時は『プチ断食』といって水分摂取はOKということでスムージーブームがあったり、他にも『16時間断食』『週末断食』『三日間断食』などなど種類はいくつかあり、とにかく一定期間固形物を食べないことで胃腸など消化器を休め、カラダをリセットするということなのですが。内臓疲労・腸内環境の悪化・代謝酵素の不足、どれも改善したいけれど、食べないなんて無理。

私は元々胃腸がスッキリしない体質で、細かな検査をしても特に問題が見つからないので結局いつも「ストレスでしょう」「過敏性腸症候群でしょう」と言われてよくわからないまま、処方された薬でごまかすようなことを繰り返してきました。流されるように日々を送り、気づけばそんな風になった身体との付き合いも30年近く。もはや諦める形で『これが通常』位に捉えるようになっていました。やがてこの良くはない状態をまるで波を乗りこなすかのようにだいぶわかるようになってしまい、忙しければそんな不調に意識を向けないという要らない術まで修得。
ところが、昨年一年は『更年期症状』というものも現れ始め、不調が胃腸どころではなくなってくると危機感が目覚めたのです。「いいわけないだろう!」と。そこで運動を習慣化することなどから生活習慣の見直しをはじめ、相変わらずの腸内環境もなんとかしたい!と真剣に向き合ってみる気力が生まれはじめました。

そんな時、自分には無理だと諦めたファスティングとつながる機会がありました。こどものPTA活動で知り合った方が管理栄養士の資格をお持ちで、お仕事の一つにファスティングを扱っていたのです。『おいしく食べるファスティング』と言って、完全に食を断つのではなく、管理栄養士さんが伴走してくれながら3食摂取するスタイルの無理のないファスティングという、今の環境の私には「これならば!」と、まさにご縁でついに初ファスティングにチャレンジする日がやってきました。
始めてからまず自分がいかに間食をしていたかに気づき驚きました、自覚のない間食です。
せっせと家事をしているときは無いのですが、しっかりPCと向き合う時間にちょっとした何かをちょこちょこと摘まむことが習慣化していたのか、なにか物足りない感覚が来るのです。3食以外は水分ならOKなので口寂しくなると水分を少量ずつ採ることで何とか凌ぎました。
準備期間として何日か前から気を付けたことはあったのですが、一日目には言われていた通りに少し眩暈や頭痛もありました。それには症状によって塩分や糖分を飲み物などで摂取することで改善されました。
常に担当の管理栄養士さんがLINEでサポートしてくださるので安心です。

3日間のファスティングを終えると『回復食』と言って消化に良いものから少しずつ通常食に近づけていきます。
通常食という名の普段の食事。これがいかに尊いものかしみじみ感じられる体験でした。
食欲を満たすことができるありがたさの一方で、ただ「食べたい!」を満たすだけでなく、自分の体が何を求めているのか、皮膚、爪、髪、目など教えてくれている箇所をしっかり見て本当に必要なものを摂取することの大切さも噛みしめられる経験となりました。
食品高騰とか、不足とかもちろんそれは切実な問題ですが、そもそも捨てることに無感覚になるほどあふれかえっている中で、必要以上に摂取する。自分の体が本当に欲している量もわからなくなるほど食べてしまう。
バランスが大きく崩れているのではないかと改めて見つめなおすきっかけとなり、まず自分自身の声を聴くことを日頃から意識して必要なものを必要なだけ、が出来るようトレーニングのつもりで楽しんでみようと思っています。鈍感なのか敏感なのかわからなくなっていた私の腸内環境も優しく本来の力を取り戻せるよう、この意識をキープしたいと思います。食生活の見直しは健康維持だけでなく、無駄買い、食べすぎ、食べ残し防止にもつながりそうです。

最後に大阪・関西万博の理念に書かれていたメッセージの一部分を。

『私たちのいのちは、この世界の宇宙・海洋・大地という器に支えられ、互いに繋がりあって成り立っている。その中で人類は、環境に応じて多様な文化を築き上げることにより、地球上のいたるところに生活の場を拡大した。その一方で、人類は、利己を優先するあまり、時として、自然環境をかく乱し、さらには同じ人類の他の集団の犠牲の上に、不均衡な社会を作り上げてきてしまったのも事実である。そして今、生命科学やデジタル技術の急速な発達にともない、いのちへの向き合い方や社会のかたちそのものが大きく変わりつつある。
いのちそのものを改編するまでの高度な科学を築き上げた私たちには、人類が生態系全体の一部であることを真摯に受けとめるとともに、自らが生み出した科学技術を用いて未来を切り開く責務があることを自覚し、行動することが求められる。自然界に存在するさまざまないのちの共通性と相違性を認識し、他者への共感を育み、また多様な文化や考えを尊重しあうことによって、ともにこの世界を生きていく。そうすることによって、私たち人類は、地球規模でのさまざまな課題に対して新たな価値観を生み出し、持続可能な未来を構築することができるにちがいない。』 

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会HPより